大判例

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大阪高等裁判所 昭和24年(を)4126号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

原判決は被告人が西尾初江を欺し金銭貸借名義の下に昭和二十四年一月二十五日から同年七月十四日までの間に二十回に亘り合計金五十九万三千五百円の現金を騙取した事実を認定し、その明細を第一乃至第二十に分け各日時場所、金額を個別的に判示している。判示方法として正当なことは異論がない。そこで記録に基いて証拠の内容を検討すると被告人はその明細について公判廷でこれをすべて自認する供述をしているけれども、被害者たる西尾初江は同年七月二十三日自殺しているので同人の供述を得る由もなく、その明細に対する直接補強証拠としては被告人の使者となつて西尾初江から金銭を借受けて来た灰原君代(判示第一関係)森永千惠子(判示第二及び第十三関係)の供述だけである。しかし原判決挙示の証拠(勿論被告人の供述を除く)を総合すると「西尾初江は自分の貯蓄していた金や他から融通を受けた金を利息を取つて他人に貸与していたが、主として昭和二十三年十二月頃から被告人に貸していたもので、西尾初江が他から融通を受けた金は、岩田トクより昭和二十四年一月から七月十五日まで七回に十七万一千円、竹田くじゑより同年三月二日頃に三万円その後三万円、四月二日頃に二万円その後五万円、市場せきのより二月初三万円三月初三万円三月末五千円、井上コイシより三月末までに八万円、今井キミより四月二十一日頃五万円、安田セイより四月三十日頃二十万円、五月三日頃三万五千円七月中旬十万円、田中ミツヱより四月二十五日頃三十万円六月二十日頃一万円同月二十九日頃十万円七月二日頃九万五千円、井上政吉より六月初十二万円その二三日後二十六万円七月十五日一万円、麻田ハルヱより五月一日頃五万円、岡田長三郎より六月十七日頃三万円、安田政子より六月五日頃四万円七月十一日頃二万五千円、西田久子より六月二十九日頃二万円七月六日頃五万一千円、難波公子より六月九日頃二万円七月九日頃三万円七月十五日二万円元原きりゑより六月二十六日頃一万円七月九日頃五万円七月十五日頃一万円、三浦カツより七月十五日二万円であつて、そのうちから被告人に貸与した金額の明細はわからないのであるけれども、その間三月二日には元利金合計三十三万円になつたので被告人から証書を差入れ、三月八日頃には合計約三十六万円、四月二十八日頃には更に増加して合計約百七十万円、最後に七月十八日には元利金合計四百六万円(元金二百七十万円)で西尾初江はその明細をインクで詳しく大学ノート(証第一号)に記入していたが被告人が所在をくらまし欺されていたことが判つてから怒り、四月二十日頃その部分を破り去り更に自殺前記憶するところを鉛筆で記した」事実が認められる。勿論右事実だけでは判示のような個々の明細を直接立証することはできないけれども、事金銭に関する限り、西尾初江が数十回に亘り他から借受けた金二百万円以上を、そのうちから何回にも被告人に貸与した事実がその総金額の範囲内において被告人の自認する個々の明細に関する自白の補強証拠たり得るものと解する。何となれば刑事訴訟法において被告人本人の自白のほかに補強証拠を必要としている主なる趣旨は、被告人の主観的な犯罪自認の供述があつてもそれが客観的に犯罪が全然実在せず全く架空な場合があり得るのであるから、補強証拠によつて大体主として客観的事実の実在についての確実性を担保し、空中楼閣的な事実が被告人の主観的な自白で犯罪としてでつち上げられる危険を防止するにあると解せられるからである。従つて被告人の自白は原判決挙示の諸証拠によつて十分補強されていることが肯認される。

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